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2017年6月

2017年6月 9日 (金)

中国での精神科入院記(5)

ご無沙汰しました、精神科入院記in China、久しぶりの更新です。
AZUは昼夜の寒暖差で風邪をひきまして、体力がなく犬の横に寝転んでおります。


今日書こうと思ったのは、上海にいた頃の病状と現在を比較してみたくなったのでそのネタ。
私は上海にいた頃はまだ発達障害もパーソナリティー障害も分かっておらず、単に双極性障害として治療を受けていました。旦那は現地の大学の本科に通っていて、彼の学費を含む生活費の全部を私の収入でまかなっている感じでした。旦那のSHUは小6からの不登校で、あまり学校での楽しい思い出がないまま大人になりました。もともと頭が良く向学心のあるSHUのこと、まだ「オジさん」という年齢でもないんだし、海外でなら成人でも大学に入りやすいから彼の失われた時間と体験を取り返せるのではないか?と思いついたのがそもそも私にとって2度目の上海移住のきっかけでした。


SHUに四年制大学を出てもらい、その間AZUは稼ぐ側に回る。四年間、まずは彼が学業を修めるのを費用面から支え、SHUには大学生活を存分に楽しんでもらう。彼の卒業後は彼に一家の稼ぎ頭をバトンタッチし、可能ならAZUも大学で学ぶ。そんな夢を描くようになり、SHUの上海留学は私達二人の一大プロジェクトとなりました。私もSHUの在学中きちんと就職し続けることを決意していました。


結末は……というと、二人のこの夢は精神障害という大きな壁に阻まれてしまい成功に至らなかったわけです。AZUは二度も上海の精神科入院棟に入ることになって当然仕事を続けられなくなり、SHUも入院までは行かずとも大きな事件をいくつか起こし、結局SHUが三年生の途中で私たちはやむなく帰国することに。ちょうどその頃SHUの父親が末期ガンと診断され三ヶ月足らずで亡くなったのも重なり、SHUの復学はかないませんでした。


入院していた時、SHUがほとんど持ち金がない中で私の好きな石焼き芋などを1つだけ持って地下鉄の駅から走ってお見舞いに通ってくれたことを思い出すと今でも胸がしめつけられます。彼の授業が終わるのは午後3時半、病院の面会時間は4時半までなので地下鉄に乗って病院まで走らないと間に合わない。病気と不自由な環境ゆえにわがままになっていたAZUはそんなSHUがいつも遅く来るのが不満でたまらず、まともにおいしいお土産を持ってきてくれるわけでもない彼に文句を言ったりしていました。


その頃の私は自分のなけなしの尊厳を必死で守ろうと旦那をサンドバックのように使っていたのです。入院記を書くと面白おかしいエピソードがたくさん出てくるし、「考えさせられる」「中国らしくて笑った」とかポジティブな感想をいただいたりします。でも実際は私が呑気に入院棟で休んでいる間にSHUにはもっと壮絶な闘いを強いていたのだということが今は痛いほどわかります。だから今までのように中国の病棟のユニークさや自身の病気の症状にばかり焦点を当てた入院記が書けなくなってきたのです。


AZUとSHUは結婚して8年半になりますが、本当に幸せだったのは一番最近の「半年」だけだったと思います。毒のある親の干渉、互いの精神障害とそれに伴う経済難、弟妹との決別と義母との同居、もう苦痛でしかない結婚生活が8年も続いて今やっと、本当にやっとのことで昔を振り返って「ごめんね、つらい思いをさせたね、本当に悪かった」という言葉が出せるようになったのです。


上海は私の心のホームタウンではあるけれど、その土地には私の涙がたくさんたくさん染み付いています。よく上海を指して「魔都」と言ったりするけど本当に上海には魔物がいるような気がする。上海の延安路と西藏路の交わるところには高架があるのですが、その基礎工事の際にどうしても杭が刺さらなかった場所があるという。後でその方面に詳しい人に調べてもらったら上海の地下に眠るドラゴンの眼にあたる部分だったから杭が刺せなかったのだとか……。魔都上海はそういうネタに事欠きません。私が昔働いていた会社も引っ越してから経営と運営が大きく傾き、社長の気が触れてしまったことがあった。上海の古い地図を開いて調べたら新事務所の位置はもともと墓地だったとか。本当に見えないブラックな力が働いているような、私にとってはそんな背が一瞬ヒヤッとするような魔法都市が上海なんです。


上海から用事があってたまに一時帰国すると「夢から醒めたような」現実感がふっと湧いてきます。中国にいる時間は異次元の中で深い眠りについたまま熱に浮かされていたような、それが日本に降り立った途端シューッと音がして目が覚め、張り詰めていたものから空気が出ていくような、そんな体験をしたことが何度もあります。不思議ですね。やっぱり、上海は私にとって魔都です。


もう上海に住むことはないだろうな、という不思議な予感があります。
とうとう魔法から解かれたような、安心感もあります。


SHUを殴ったり友人宅で気を失って気づいたら自宅のベッドで寝かされていたり、マンションから飛び降りようとして大怪我をして、SHUが自分の白いトレーナーで必死に止血してくれたこともありました。そこでの入院体験を思い出すことがだんだんつらくなってきたのも事実です。今はそれより、今現在の生活と将来の幸せを見据えて着実に地に足をつけていなければ。


というわけで、入院記は今後も書いたり書かなかったりするかもしれないけれど一旦完結です。AZUは筋金入りの気まぐれさんなので書きたくなったらまた発作的に書くし、書く気が起こらなければもう続きはないかもしれないし。そんなところでご勘弁下さいまし。



暑くなったね、雲が夏の形してるね。


AZU

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